今日のお話

父ちゃんのお話。

父ちゃんがお話をしてくれたよ。

「あるところに赤ちゃんがいました。赤ちゃんは大きくなって大人になり、おじいさんになってしにました」

もっと情熱的なお話にしてよ、とおらがいうと、

「あるところに赤ちゃんがいました。赤ちゃんは情熱的に大きくなって大人になり、おじいさんになってしにました」

になりました。

それじゃつまんないので、ちがうお話にしてもらいました。

あるところに、なにもありませんでした。なにもないので、男は毎日なにもしませんでした。ある日、男の足元にことわざがたくさん落ちていました。ことわざはおじぞうさんの入ったケースにおじそうさんといっしょに入っています。どうしてことわざが落ちているのかというと、もうそのことわざは役に立たなくなったから捨てられてしまったのでした。どんなことわざかというと、たとえば「下手なてっぽうシャブ打ちゃ当たる」とかで、捨てられて当然のごみでした。男は毎日ことわざのごみを拾っては中をみて燃えないごみの日に出す仕事をしました。

ある日、ことわざのごみが見つからないので、男はそういえばこのことわざはどこからここまでやってくるんだろうと思ってよおおおく考えると、目の前に坂道があるのに気がつきました。ことわざのごみはこの坂道をごろごろ転がってきていたのでした。そこで、男は坂をのぼってみることにしました。坂のとちゅうで、おじそうさんがたくさんころがっているのを見つけました。すると上のほうからことわざが坂をすべるようにやってきて、おじぞうさんにぺたりとはりつくと、おじそうさんは魚のブダイみたいにまくを吐いておじぞうさん入りことわざケースになり、坂道をごろごろ転がっていきました。

男はさらに坂道をのぼりました。すると坂のちょうじょうに着きました。そこには死んだ犬と生きている犬がいました。生きている犬が男にいいました。「こいつはもう死んじゃったから下におろしてくれ」男は死んだ犬を坂道にすべらせました。すると生きている犬は自分を四角いかばんにゴムのバンドでくくりつけて「おれにはこいつしかおらんかった」といいました。男は「そうか」とこたえました。そして生きている犬を上手にかばんの上に乗せると、かばんと一緒に坂道をすべらせて下に送ってやりました。犬たちがいなくなると、そこにはウィスキーの大きなたるがありました。生きている犬は坂道をすべりながら、「おれにはもうなにもないから、ウィスキーはお前にやる」と男にいいました。誰もいなくなったので男はウィスキーを飲みました。それが今の父ちゃんです。おらはおじぞうさんじゃないよ。おしまい。

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